勉強中に立ち歩くのは「やる気がない」からではない
「集中力がない」「すぐに席を立つ」──そんな子どもを見ると、つい「落ち着きなさい!」と言いたくなりますよね。
ですが実は、勉強中に立ち歩くのは「やる気がない」せいではなく、脳の仕組みと心の状態が深く関係しています。
つまり、叱るよりも「なぜ立ってしまうのか?」を理解することが、解決の第一歩なのです。
すぐ立ち歩く子の心理的背景3つ
① 長時間の集中に耐える力がまだ育っていない
小学生の集中力の持続時間は、一般的に「年齢×1分」と言われます。
つまり、小学2年生なら約15分が限界。
長く座らせようとしても、脳が疲れて立ち上がってしまうのは自然なことなのです。
「集中が途切れた=悪い」ではなく、「休憩が必要なサイン」と受け止めることが大切です。
② 「できない」への不安から逃げている
難しい問題にぶつかると、子どもは「失敗したくない」「わからないのが恥ずかしい」と感じます。
このとき脳は逃避反応を起こし、無意識にその場を離れようとするのです。
立ち歩きは、「わからない」という感情を処理できないサインでもあります。
まずは「わからないところ、一緒に考えてみようか」と声をかけて、安心させてあげましょう。
③ 「勉強=窮屈」というイメージが定着している
勉強=我慢するもの、と感じている子は、自然と体が動いてしまいます。
「じっと座る」ことそのものが苦痛になっている場合もあります。
そんなときは、環境や姿勢の工夫で“窮屈さ”を減らすことから始めましょう。
家庭でできる!立ち歩きを減らす5つの工夫
① 勉強時間を「短く区切る」
最初から30分や1時間は無理でもOK。
「10分集中+2分休憩」を1セットにするなど、子どものペースに合わせたリズムを作りましょう。
「終わりが見える勉強」は、脳の負担を減らし、結果的に集中力を高めます。
② 勉強場所を変えてみる
いつも同じ机では飽きてしまう子もいます。
リビングやダイニング、時にはベランダなど、「場所を変えるだけ」で集中が戻ることがあります。
環境の変化は脳をリフレッシュさせ、意欲を引き出す効果があります。
③ 手を動かす学習を取り入れる
じっとしているのが苦手な子には、身体を動かしながら学べる方法が有効です。
例えば、漢字カードを並べ替えたり、九九を声に出しながらジャンプしたり。
動きを加えると「遊びながら学ぶ」感覚になり、自然と集中時間も延びていきます。
④ 勉強中の“視覚刺激”を減らす
テレビ、スマホ、兄弟の声など、周囲の刺激が多いと子どもの注意がすぐに散ってしまいます。
机の上は教材と鉛筆だけにし、視界の情報を減らすだけで集中力は格段にアップします。
また、照明の明るさを少し落とすだけでも“静かな空間”を感じやすくなります。
⑤ 「立ってもいいよ」と許可する
意外かもしれませんが、「立つのは禁止!」よりも、「立ってもいいよ、終わったら戻ってこよう」と伝える方が効果的です。
禁止されると、立ちたくなるのが子どもの心理。
自由を認めた上で、「終わったら戻る」というルールを作ると、かえって落ち着くケースもあります。
体験談:立ち歩きが減った“たった1つの習慣”
筆者の家庭でも、小学3年生の娘が「勉強中にすぐ席を立つ」タイプでした。
最初は「また立ってる!」と叱っていましたが、逆効果。
ある日から「10分だけ集中して、終わったら一緒にストレッチしよう」と約束したところ、
娘は「あと少しで休憩だ!」と楽しそうに勉強を続けるようになりました。
「我慢」ではなく「切り替えのリズム」を取り入れるだけで、立ち歩きは自然と減っていったのです。
教育心理学から見た「集中力を育てる家庭環境」
教育心理学では、集中力は「性格」ではなく「環境要因」で大きく変わるとされています。
特に家庭では、以下の3つが重要です。
- ・親が静かなトーンで声をかける
- ・できたことを言葉で承認する
- ・学習スペースを“安心できる空間”に整える
この3つを意識するだけで、子どもの脳が「学び=安全」と感じやすくなり、自然と集中時間が延びていきます。
やってはいけないNG対応3つ
① 「どうして集中できないの!」と叱る
叱ると、子どもは「自分はダメなんだ」と感じてしまい、自己肯定感が下がります。
一時的に座っても、根本的な改善にはなりません。
② 「立ったら勉強時間を延ばす」などの罰を与える
勉強そのものが罰と結びつき、「勉強=嫌なこと」になります。
短くても“やり切れた経験”を積ませる方が効果的です。
③ 「集中できる子と比べる」
他の子と比べられると、子どもは「自分はできない」と感じ、さらに立ち歩きが増えます。
比べるのは「昨日の自分」とだけにしましょう。
まとめ:立ち歩きは「成長途中のサイン」
勉強中に立ち歩くのは、集中力が足りないのではなく、成長の途中にあるサインです。
叱るより、「どうすれば続けられるか」を一緒に考える姿勢が、子どもを安心させます。
「立ってもいいよ」「次はここまで頑張ろう」――この小さな言葉が、
子どもの心を落ち着かせ、集中力を育てる一番の近道です。

